最前線からのインバウンド新常識!
“観光戦国時代で勝つ”
株式会社ノットワールド 河野有

第10回 未来の旅行を考える (その2:観光の大きな絵を描く)

〜内容〜

[1] 観光公害を身近に感じた日

先月は、京都と金沢に出張で行くことがありました。
そこで、最近よく新聞でも目にする、観光公害、に遭遇し、考えることになりました。

例えば、

  • 京都駅からのバスはめちゃくちゃ混んでいて、更に大きな荷物を持った旅行者も多く、乗れない。降りれない。
  • 街の中心地から京都駅へのバスは時間によってとても混んでおり、載せられないと思ったらバスは扉を開かない。。。(当然次のバスを待つしかない。。。)
  • 駅のホームからのエレベーターで大きな荷物を持った観光客が独占するため、ベビーカーを押しているお母さんや足の悪いおばあちゃんが何度もエレベーターを待つ必要がある。
  • 町中に新しいホテルがどんどんできていて、だんだん東京と同じような景色になってきてしまった。。。
  • 有名なお寺は日本人外国人含めて観光客ばかりで、寺を見に来たのか人を見に来たのかわからない
  • 金沢だと、バスでパスモのようなICカードが使えないため、外国人は精算の方法がわからず、降りるのに時間がかかる。最後には大きなお札しかなくて払えない。運転手はイライラして出発してしまう
  • なんだか街中に観光客向けの安っぽいお土産屋さんが増えてきた。。

などなど

半分は東京でも日々感じることですが、京都の人を惹きつける魅力、狭い位置に密集している観光客、そしてその観光客に群がる業者、を東京よりも更に強く感じたのでした。

最近、観光公害に関して2つの本を読んだので、紹介だけしておきます。

  1. 佐滝剛弘さん『観光公害』
  2. アレックス・カーさん『観光亡国論』

僕は観光公害という名称が本当に嫌いなのですが、地元の人に、ホンキでそう思っている人も多いだろうことは予想できました。(明らかにイライラしている人や、外国人は日本語わからないだろうと思って日本語でイライラを口にする人を見かけました)

両方の本を読んでいて、一番気になったのは、地元の人の生活が成り立ってない場所に、ゲストが見に行っても、観光とは呼べないのではないか、という点です。(地元の人がおらず、観光客用に作れられただけのものに面白さはない)
まさにそのとおりだと思いますし、振り返っていろんな街を見ると、全体戦略を考えるというのができておらず、部分最適を繰り返して妙な状態になってしまっている場合が多いと感じました。

[2] 私が見たくない世界

私が絶対に見たくない世界は、同じような都市ばかりの日本、です。
すでにその兆候は出てきています。

観光の優先度が低いのが原因かと思いますが、どの新幹線の駅を降りても、そこがどこだか分からない。。
駅前にはスタバとマックを中心にチェーン店が並びます。
幹線道路が出ており、駅近くにはビル街。商店街は寂れています。

なんと悲しい都市でしょう。
経済>>>観光で街をデザインし続けてきた結果、自分の強みを自らなくしてしまっているのです。。。
今になって観光、と言い出しても、もったいない。。

日本の観光を引っ張ってきた京都ですら、高さ制限をいつの間にか取っ払い、ビルばっかり。
景観も雰囲気もありません涙。文化庁が京都に移ることで、少し変わっていくといいのですが。

この様子だと、あと10年後には、アレックス・カーの言うとおり、観光亡国、となってしまいそうで、恐ろしい事だと思います。

アジアの各国を旅行しても、思うのは、都市にあるものはどこもほとんど一緒、ということです。
言ってしまえば東京も香港もマニラもクアラルンプールも、都市部を歩いてると、言うほど変わらない。
そんな悲しいことってあるでしょうか。
経済の発展は大事ですが、もし観光を売りにするのであれば、全体デザインなくして開発を続けることは、あまりにも無謀に見えます。

[3] 民度が問われる時代

こういった問題を解決していく一番の方法は、まずは行政の中に10年後の都市や地域をデザインできる人が必要ですね。この話は本当によく出てきます。
私達は、観光という分野で、それができる人財を生み出すこと、自分たちがなっていくこと、にもどんどん取り組んでいきたいと思っています。
ただその前に、もっともっと大事なことがあります。

それは、個人個人がもっと考え、賢く(単に頭がいいだけでなく)なることだと思います。

外国人に言われてとても悲しくなったことがあります。
日本のテレビって面白いよね。バラエティも涙が出るくらい笑える!
ただ、テレビをつけると本当にバラエティしかやってないよね、と。。。

確かにそうなんです。
なぜでしょうか?

メディアは自分たちを写す鏡です。つまり、私たちがそれを求めているのです。
視聴率が取れるからメディアはそれを流します。

真面目に考えることを捨て、勉強する人をかっこ悪いと思い、単純でわかりやすいものに流され続けてきたからこそ、テレビも雑誌も芸能ネタばかり。
これは危機的状況としか思えないです。
誰かが日本人をダメにして国を潰そうとしているのか、とさえ思います。

翻って、観光に関しても全く同じだと思います。
民度を上げて、自分たちの未来をしっかり考えていかない限り、観光立国、として立っていく日本の将来像を描く事はなかなか難しいでしょう。

最後にまた本の話で恐縮ですが、先日、百田尚樹さんの『日本国記』を読みました。
いかに過去の日本人がちゃんと生きてきたか、を思い胸が熱くなります。
日本人の原点に立ち返り、自分たちのあるべき姿を考えながら努力を惜しまない。
そういう人になりたいものです。

少しでも日本の観光を変えて行くことができるよう、頑張ります。

次回は、「未来の旅行を考える その3」をお届けします。
引き続きよろしくお願いいたします。

以上

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・執筆者:河野 有、ノットワールドについてはこちら