最前線からのインバウンド新常識!
“観光戦国時代で勝つ”
株式会社ノットワールド 河野有

第9回 未来の旅行を考える (その1:通訳ガイド)

〜内容〜

[1] まずは観光先進国を見てみよう

まずは、他国のガイド制度を見てみましょう。
観光庁のレポートからです。
http://www.mlit.go.jp/common/000058983.pdfz

観光先進国といえば、ヨーロッパ諸国。
イギリス・フランスについては、非常にアカデミックな内容ですね。
フランス・イタリアの無資格者への取り締まりは、なかなか厳しいものがあります。
一番興味深かったのが、ドイツの制度。
研修の中身に、ガイド技能だけにとどまらず、プレゼンテクニック、コミュニケーションテクニックが入っています。
どんな内容なのか非常に気になりますが、現状では、素晴らしい取り組みだと思います。
(日本のガイドさんには、圧倒的に不足している能力です。)

ちなみにもうちょっと違った意味での観光先進国の話題を。
エジプト、です。
まさに観光が一大産業の国。
エジプト人から聞いた話ですが、ガイドは、医者の次くらいに給料がいい職業とのこと。

さすが世界的観光地、と感心しました。
観光大学も多いそうで、圧倒的な観光従事層の差を感じます。

[2] 日本の状況は?

日本は、2018年1月から、通訳案内士法が改善され、無資格者も有料でガイドすることが可能になりました。
通訳案内士は、全国通訳案内士という名前となっています。
詳しくはコチラをご確認ください。(https://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kokusai/tsuyaku.html
そして、通訳案内士という資格を維持するために、5年に一度有料の研修を受けねばならない状況になっています。
ちなみに、上記法律改正後、それまで増加の一途をたどっていた通訳案内士受験者は、80%程度に落ち込んでいます。
まぁ、今のままだとそうなってしまいますね。

では今度はエージェントの側から見てみましょう。
エージェントからすると、ガイドさんの評価は、資格を問わず、ゲストを楽しませられるか、につきます。(実際にガイドしてるところを見るのは結構難しい=評価は難しい)
できるだけ、ゲストに合わせてアレンジをしていくわけですが、1日プライベートツアーなどに関しては、やっぱりガイドの免許を持っている方の方が安心できることが多いです。
ただ、築地だけ、新宿だけ、などのスポットツアーでは、無資格ガイドの方が価値を出せることもあります。

これはどういうことでしょうか。

やはり、総合的な知識量、経験、能力などで行くと、通訳案内士の方が全体的な平均レベルは高いかと思います。
ただ、ことコミュニケーションの面で行くと、そうとも言えない状況もあります。スポットを絞り、コミュニケーションでカバーできると、素晴らしい価値を出せると思います。

通訳ガイドの試験やフォローアップに関しては、ドイツのように、よりコミュニケーションや、プレゼンに重きを置いていくのが必要と日々感じています。
(我々の宣伝をすると、新人さんをそっち側から育成するのが得意です!)

新人さんによく言っている事としては、『スマホ全盛時代に、旧来型ガイドで勝負しては先輩方には一生勝てない。でも、コミュニケーション・ストーリーテリングを中心としたエンタメガイドなら、一気に逆転できる!!』ということです。
資格を問わず、そのスキルと経験をどんどん磨いていき、ゲストにしっかりアプローチできる人が、より稼いでいく時代がくるでしょう。

[3] 通訳案内士制度への提言

ガイドの側として考えると、より自分の価値を高める(稼ぐ)には、

  1. 稼働日数を上げる
  2. 稼働単価を上げる

のどちらかしかありません。

通訳案内士の制度の維持を考えるに当たり、資格者にどれほど上記の2つの価値を与えられるか、ということが肝ですね。

いくつか可能性について書いてみます。

  • エージェントへの価値のある露出を高める
    現在、通訳案内士検索システムがありますが、エージェントの側から見て、めちゃくちゃ使いにくいです。
    写真や紹介でなんとなくわかりますが、結局のところ、クオリティについては、はっきり言って賭けです。このあたりが落ち着かない限り、結局市町村が出している単なる名簿と何ら変わりがない。。。
    どうしてもガイドさんを見つけねばならない、というときには若干使えますが、大いに改善は必須です。
  • 資格者への特権を付与
    ガイドさんは、クオリティを上げて単価を上げるためには、日々の研鑽が欠かせません。
    美術館に行ったり、寺に行ったり、ロボットレストランに行ったり、お金はいくらあっても足りません。その際に、資格証を出せば下見も無料になる、ということになれば、よりガイドの価値は上がりそうですね。
    特別な研修がある、とかもいいと思います。(もちろん、試験や基準は厳しくする必要があります。イギリスのように。)
    全国ガイドとなると、ゲストと一緒に旅行することも増えると思います。外国人のみ購入可能な、JRパスをガイドも買える、とかも素敵な施策ですね。
    ガイドが、指定の施設に行くと何かサービスがある、とかも面白いと思います。

最後に、通訳案内士制度への提言にはつながりませんが、私たちが考えていることを。
ゲストへの直接予約の道を拡げる事は単価を上げることに大きく寄与します。(トリプルライツを始め、直接のCtoCマッチングも増えて来ていますね。)

お金について考えてみましょう。
ガイドの価値は、以下から算出されると思います。

ゲストにとってのガイドの価値 = A:コンテンツ × B:デリバリー × C:プロモーション

エージェントは、AとCをやることで、利益を出す。
ガイドは、Bのみなので、若干手取りは安いけど、ガイドに集中できます。

CtoCマッチングを使うと、AやCを自分で頑張る代わりに、自分の取り分が増えていくわけですね。
マッチングサイト上では、評価が重視されますので、プロモーションにもなるわけです。ただ、問い合わせ対応なども重なり、忙しい時には大変です。

どちらにしても、
ガイドさんが、自分のやりたいときに仕事をできて、ガイドとして生活したい人が生活できるようになる(=業としてしっかり成立する。ひいては憧れの職業になる)ことが、すそ野を広げ、よりいい人材を呼ぶ事になるでしょう。

観光は人がすべて。
観光業に携わる人たちのレベルを少しでも上げられるよう、我々も努力してまいります。
弊社新サービスにも乞うご期待、ということで、今回は終了です。

次回は、「未来の旅行を考える その2」をお届けします。
引き続きよろしくお願いいたします。

以上

ご意見やご感想があれば何なりと連絡をください。必ずご返答差し上げます! →info@knotworld.jp

・執筆者:河野 有、ノットワールドについてはこちら